フォトマスクとは?半導体製造に不可欠な要素について解説

フォトマスクとは?半導体製造に不可欠な要素について解説

スマートフォンから車載コンピューターまで、あらゆる先端技術の背後にある半導体産業。そして、その裏側で力を発揮するのがフォトマスクです。

この記事では、半導体製造の不可欠な要素であるフォトマスクに焦点を当て、その役割を解説します。

フォトマスクとは

フォトマスクは、半導体や電子回路を作る際に使われる重要な部材です。基本的にはガラスやPET素材でできた透明なプレートの上に、特定の回路パターンを薄い金属膜(一般的にはクロム)で描きます。

フォトマスクは、電子機器の心臓部分となる微細な回路を作るための「型」のようなものです。

このおかげで、私たちが日常使っているスマートフォンやコンピューターといったさまざまな電子機器が製造されています。

半導体製造におけるフォトマスクの役割

半導体製造において大切なフォトマスクの役割を詳しく見ていきましょう。

パターン転写の型

フォトマスクは、複雑な電子回路のパターンを半導体ウェハーの上に転写するために使用されます。このプロセスは、高精度で微細なパターンを必要とするため、フォトマスクの精密さが大切になっています。

ウェハーとは、さまざまな電子製品に搭載される、半導体の材料になる薄い円形の板のことを言います。

リソグラフィプロセスの中心部分

半導体製造において重要な工程であるリソグラフィ。

このリソグラフィプロセスで、フォトマスクに描かれたパターンが光を通してウェハーに投影され、感光材(フォトレジスト)が塗られたウェハー上に同じパターンが形成されます。

精密製造のための重要なツール

半導体の機能は、その上に形成される回路のパターンによって決まります。

フォトマスクは、これらの回路パターンを正確にウェハー上に再現するための重要な役割を担っています。

レイヤー形成

現代の半導体は、多くの異なる層から成り立っています。各層は個別のフォトマスクを用いて製造され、全ての層が正確に重ねられることで、最終的な半導体が完成するのです。

フォトマスクの製造工程

フォトマスクの製造工程は、複数のステップを含みます。フォトマスクの製造工程の中でも重要な手順は次の通りです。

  1. フォトマスクに転写する回路パターンの設計(デザイン)
  2. 透明なガラスやクォーツ製の基板を用意、洗浄
  3. 基板に遮蔽膜とフォトレジストの層をコーティング
  4. 設計されたパターンを感光材料に露光
  5. 露光された部分を現像してパターンを形成
  6. 不要な感光材料を除去し、パターンを基板上に残す(エッチング)
  7. パターンの精度を検査し、必要に応じて微調整


この工程を通じて、微細な回路パターンがフォトマスク上に正確に形成され、それが後の半導体製造に使用されます。

フォトマスク検査装置とは

フォトマスク検査装置とは、フォトマスクを製造する工程の間で欠陥や不良がないかを見つけ出す装置のことです。外観上の不良だけではなく、回路パターンの位置や寸法の精度不良もここで検査されます。

フォトマスク検査は、専用の検査装置を使用することで、高速で精度の高い検査が可能です。

フォトマスクとレチクルの違い

レチクルとフォトマスクは、使用する設備や目的によって使い分けられます。

フォトマスクは、半導体の製造プロセスで使用される型板で、特定のパターンがガラスやクォーツのプレートに転写されています。このパターンを使って、ウェハー上に回路を形成します。

レクチルは、全ウェハーを一度に露光するのではありません。レクチルの表面は回路パターンの凹凸が作られていて、凸部分は光を吸収、凹部分に反射した光がウェハーへ投影されます。

凹凸の汚れや欠陥は表面の保護膜(ペリクル)によって防止されます。

フォトマスクの世界市場


フォトマスク市場は、半導体産業の成長に伴い拡大しています。特に、スマートフォンや自動車、データセンターの需要増加が半導体の需要を牽引しており、それに連動してフォトマスクの需要も増加しています。

半導体デバイスの微細化が進むにつれて、より高精度なフォトマスクが求められているのが現状です。

これに応じて、フォトマスクの製造技術も進化し続けており、高解像度のリソグラフィ技術などが開発されています。

フォトマスクの市場の中心はアジア太平洋地域です。この地域には、台湾、韓国、日本などの半導体製造大国が位置しており、これらの国々の半導体産業の成長が市場を牽引しています。

特に日本勢は世界のフォトマスク市場の上位を占めており、TOPPANホールディングスと大日本印刷のシェアを合わせると5割近くになります。

フォトマスク市場の成長は、高性能化やデバイスの小型化が進む中で、より精密なフォトマスクの需要が高まっていることに支えられています。

フォトマスクブランクスとは

フォトマスクブランクスとは、フォトマスクを製造する元になる基板のことです。

フォトマスクブランクスは透明なガラスやクォーツ製のプレートで、上には感光性の膜がコーティングされています。フォトマスク製造の初期段階で、このブランクスに特定のパターンが描かれます。

具体的には、フォトマスクブランクスには主にクロムなどの金属膜が塗布され、その上に電子ビームや光を用いてウェハーに転写するためのデザインが描かれることになります。

このプロセスを通じて、微細な半導体回路の製造が可能になります。

フォトマスクブランクスの品質は、最終的なフォトマスクの精度に直接影響を与えるため、高品質のブランクスの選択が重要です。

これにより、半導体製造における精度と効率が保証されます。

フォトマスクの保管と取り扱い方法

フォトマスクの保管と取り扱いには、特に注意が必要です。これは、フォトマスクの微細なパターンが非常に繊細で、汚れや損傷から守る必要があるからです。

フォトマスクを適切に保管する方法のひとつとして、フォトマスクケースを使用する方法があります。

フォトマスクケースは、フォトマスクが物理的な衝撃や環境からの汚染(ほこりや化学物質など)から守るために設計されています。フォトマスクケースは、クリーンルーム内での使用に適した、静電気防止機能を持つプラスチックや他の非反応性材料で作られています。

フォトマスクケースの使用は、フォトマスクの寿命を延ばし、半導体やディスプレイの製造過程での品質を維持するために非常に重要です。

フォトマスクについてのまとめ

半導体製造に欠かせない主要部材のフォトマスクは、日本の技術が世界の市場を引っ張っています。

ますます高度化する電子機器の生産において、フォトマスクは世界の半導体業界の進展に大切な役割を果たしていると言えるでしょう。

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