窒素ガス発生装置でバイオマス発電の火災防止

窒素ガス発生装置でバイオマス発電の火災防止

火災防止に必要な窒素ガスを身の回りの空気から大量生成

木製ペレットなどの木質燃料を使う木質バイオマス発電では、火災防止が大きな課題です。火災の原因は、長期保管される木質燃料の発酵と発熱によるものです。保管場所での発火や爆発、燃焼の拡大を抑制するために窒素ガスを継続的に供給して酸素濃度をコントロールする方法が注目されています。
本記事では、窒素ガスの有用性やバイオマス発電に適した窒素ガス発生装置を紹介します。

バイオマス発電とは

バイオマス発電とは、動植物由来の有機性資源(バイオマス)を使う発電法です。石油などの化石燃料と違い、再生可能で資源循環性のある資源を活用します。そのため、カーボンニュートラルの観点からも注目されています。

増加するバイオマス発電所

日本では、水力や風力による発電量が横ばいであるにもかかわらず、バイオマス発電量の割合は増加しています。FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)認定の発電所も増加傾向にあり、2024年6月時点で計1,075カ所、839.5万kWのバイオマス発電所が稼働しています。

燃料の保管と輸送

生物資源の中でも木質バイオマスと呼ばれる木質チップやペレットは海外からの輸入が多く、特に木質ペレットは輸入量が急増しています。
これらの燃料は、港から発電所近隣の燃料ヤードと呼ばれる保管場所や加工場に輸送します。その後、バイオマス発電所内の燃料タンクやサイロに搬入され、数日から数カ月間の長期にわたって保存するのが一般的です。保存されている燃料は発電所内をベルトコンベアーなどで輸送した後、ボイラーで燃焼されます。
火災が発生しているのは、輸送経路にあたるサイロやベルトコンベアーなどです。

バイオマス発電で有用な窒素ガス

火災が相次いで発生しているバイオマス発電所で、窒素ガスの役割が注目されています。

バイオマス発電で火災が起きやすい理由

バイオマス発電所内で火災が起きる原因の一つは、サイロ内で木質バイオマスが長期保存されるために起こる発酵と発熱です。微量な水分により自然発酵した木質チップやペレットが自然発火し、粉じん爆発や可燃性ガスへの引火を引き起こすことで、大規模な火災が発生します。
他にもコンベアなどの機器の摩擦で発熱し、粉じんに着火する場合もあります。

窒素ガスの役割

バイオマス発電では、木質バイオマスの長期保存が必要です。そのため、サイロ内に可燃物があっても燃焼を引き起こさない酸素濃度(5〜8%)を維持することが求められます。
そこで窒素ガスをサイロ内に常時供給しながら、酸素濃度を調整する手法が注目されています。
窒素は人体に影響がなく、無毒で無臭です。もともと空気中にある気体のため、環境にも影響を与えません。大量の窒素ガスを使ってサイロ内にある酸素の割合を低下させることで、燃焼のリスクを低減させることができます。

液体窒素と窒素ガス発生装置の違い

バイオマス発電所では火災発生の応急処置として、ローリーなどで運ばれてきた液体窒素を使って燃焼リスクを抑える方法が採用されています。
しかし、液化窒素では窒素の純度をコントロールできず、大量の窒素を使う場合は必要以上のスペックを消費してしまうため、コストパフォーマンスが悪くなります。
一方、身のまわりにある空気を使う窒素ガス発生装置は、純度をコントロールできるのが特徴です。大量の窒素ガスを供給できるだけでなく、必要なタイミングに必要な量だけ供給できます。
さらに、サイロ内へ窒素ガスを注入し続けて酸素濃度をコントロールすることで、継続的な火災防止対策が可能です。

コフロックの窒素ガス発生装置

サイロの火災を予防する場合、継続的に適切な純度の窒素ガスを供給する必要があるため、大量の窒素ガスを生成できる設備が求められます。
そのため、窒素ガス発生装置の中でも窒素ガス生成量が多く、省エネで稼働するタイプがおすすめです。

GENE-BASE Series(NECP)


GENE-BASE シリーズ(NECP)は、専用ボンネットを採用しており、屋外設置が可能な窒素ガス発生装置です。
コンプレッサを内蔵しているため、この一台で窒素ガスを生成でき、トータルコストを抑制できるのが最大の特徴です。
BOX構造で必要な機能がまとめて収納されているため、高温環境(45℃)でも運転可能で、低騒音を実現しています。

主な特徴

  • 窒素純度:95〜99.999%
  • コンプレッサ内蔵型
  • IPX3の防水性能
  • 騒音値60db(A)以下の低騒音設計
  • 屋外対応型

タイプ

窒素ガス発生量

製品寸法(W×D×H)

コンプレッサ出力

7.5kWインバータ使用

7〜30N㎥/h

1,840×960×1,630mm

7.5kW

11kWインバータ使用

10〜41N㎥/h

1,550×1,400×1,930mm

11kW

15kWインバータ使用

15〜56N㎥/h

1,750×1,400×1,930mm

15kW

22kWインバータ使用

23〜95N㎥/h

2,160×1,600×2,150mm

22kW

屋外設置例(写真右の装置)

NEⅡ Series


NEⅡ シリーズは、コフロックの窒素ガス発生装置の中でも発生量が多いタイプです。

操作ボタンはパネル扉に収まるよう設計されており、コンパクトなサイズのため、省スペースで活用できます。外部エア供給型のため、別途コンプレッサを設置する必要があります。

主な特徴

  • 窒素純度:99〜99.99%
  • コンプレッサ別置型(外部エア供給型)
  • メンテナンススペースが600mmのみのコンパクトな筐体設計
  • 室内型

タイプ

窒素ガス発生量

製品寸法(W×D×H)

適合コンプレッサ出力

NEⅡ-11K

20〜32N㎥/h

693×1,160×1,700mm

11kW

NEⅡ-15K

30〜55N㎥/h

907×1,160×1,700mm

15kW

NEⅡ-22K

40〜70N㎥/h

1,151×1,160×1,762mm

22kW

NEⅡ-37K

60〜100N㎥/h

2,133×1,130×1,950mm

37kW

NEⅡ-55K

100〜180N㎥/h

3,133×1,130×1,950mm※

55kW

※筐体が2分割のため、設置場所での連結が必要です。

NEMH Series


NEMH シリーズはNEⅡ シリーズと同様、コフロックの窒素ガス発生装置の中でも発生量が多いタイプです。
窒素ガス発生量に対して設置面積が業界最小クラスのためスペースを確保しやすく、さまざまなレイアウトに対応します。
外部エア供給型のため、別途コンプレッサを設置する必要があります。
屋外設置に対応した設計により、周囲温度2〜40℃の環境でも使用できます。

主な特徴

  • 窒素純度:99〜99.99%
  • コンプレッサ別置型(外部エア供給型)
  • 設置面積が業界最小クラスのため省スペースで使用できる
  • 窒素ガス使用量に応じた省エネ機能(気筒休止システム)を搭載
  • 屋外対応型

タイプ

窒素ガス発生量

製品寸法(W×D×H)

適合コンプレッサ出力

NEMH-37K

63〜110N㎥/h

1,520×1,400×2,680mm

37kW

NEMH-45K

75〜140N㎥/h

1,850×1,400×2,680mm

45kW

NEMH-55K

100〜180N㎥/h

2,180×1,400×2,680mm

55kW

※屋内に設置するタイプは、全て高さが2,620mm。

コフロックの強み

コフロックの強みは、窒素ガス発生装置を幅広い業界へ提供した経験から培った、トラブル対応や課題解決の豊富な実績です。設置後の定期メンテナンスやアフターフォローにおいても、お客様に寄り添った対応力・サービスに自信があります。
メーカーである特性を活かし、使用流量や設置場所などお客様の環境に合わせたスペック調整やレイアウト提案なども行っています。

コフロックについて


コフロックは全国に6つの拠点と2つの国内工場を持つ、創業75年を超える企業です。
「流体を科学する」メーカーとして事業を広げており、流量制御・流量計測機器ガス発生装置、エンジニアリング装置など、高品質で高付加価値のある製品を世界に送り出しています。
コフロックの製品は半導体、医療、各種産業機械、食品、大学や企業の研究など多種多様な分野で使用されており、これからも安定性・操作性に優れた機能や仕様を改良・開発し続けます。